研究デザイン(コホート研究・症例対照研究・横断研究)

 研究について漠然と知っている方も多いと思いますが、研究の種類は多岐に渡ります。今回はその中でも最も有名な、時間軸に沿って分ける事で区別されるコホート研究・症例対照研究・横断研究の3つについて説明していきたいと思います。

 

 

コホート研究

 コホート研究では、現在集まっている被験者を2つのグループに分けます。そこで、片方には要因があり、もう片方には要因がないようにします。そして未来まで研究を継続させ、疾患の有無を各グループで比較する研究スタイルのことです。f:id:nashuto:20190311114551p:plain

 

 具体例で考えます。あなたはコーヒーを飲んだら寿命は延びるのか?について研究する事にしました。まずあなたは今いる100人の被験者を2つのグループに均等に分けます。片方のグループには死ぬまで毎日コーヒー1杯を飲んでもらいます。もう一方のグループにはコーヒーを一生飲んでもらわないようにします。そして数十年後あなたは被験者が全員死んだ時に、コーヒーを飲んでいたグループと飲んでいなかったグループで寿命の長さを比較します。コーヒーを飲んでいた側は平均100歳まで生きたけど飲んでいない側は65歳だった。きっとコーヒーはいい! と結論付けるのがコホート研究です。この場合、要因はコーヒーを飲むことで疾患は死亡です。

 

 この研究スタイルは3つの中で最も良いデザインだとされています。何故ならコホート研究では現在から未来に向かう前向きの時間軸で時間に沿って研究を行うことができるからです。自然な流れですよね。従って因果関係が明確です。加えてバイアス、つまり偏りが少ないです。

 

 しかしデメリットとしてお金と時間がかかります。具体例で挙げたコーヒーの場合だと、被験者が死ぬまでずっとコーヒーを与えなければいけません。慣れてくると既存の安いインスタントの味に我慢できずに「オーガニック」「イタリア製のドリップは違う」「急冷させて香りを閉じ込める」「上 島 珈 琲」なんて言われるかもしれませんね。お金と手がかかります。加えて時間がかかります。死ぬまで被験者を追いかけるので何十年かかるんでしょう、途方にくれそうです。

 

 

症例対照研究(ケースコントロール研究)

 症例対照研究(ケースコントロール研究)はコホート研究とは逆で、現時点で被験者を疾患があるグループと無いグループに分けて、それぞれ過去に要因があったかどうかを過去に遡って調べる方法です。

 

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 これも具体例で考えましょう。60代で亡くなったグループと60代でまだピンピンのグループに分け、過去に酒豪であったかを聞き取ります(亡くなった場合は親族に聞き取りましょう)。60代で亡くなった方の方が酒豪の割合が高ければ飲酒と寿命は関係してそうだな、なんて察しが付きます。これが症例対照研究です。

 

 症例対照研究はお金も時間もかかりません。それぞれのグループの被験者に「過去に酒を浴びるほど飲みましたか?」と聞くだけです。それが最大の魅力でしょう。

 

 一方デメリットとしてバイアスが大きい、つまり信頼性・エビデンスが低いので研究者や論文の読者はそれを踏まえて処理して理解する必要があります。過去に酒をどのくらい飲みましたか?と聞いても正確な情報はなかなか得られないでしょう。

 

 

横断研究

  横断研究とはこれまでの2つとは異なり、時間の流れは有りません。現在の瞬間での要因と疾患の有無を調べる方法です。

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 具体的に考えます。最近、歯周病は全身の疾患と関係していることが分かっています。それを踏まえてあなたは歯周病と心疾患の関係を研究することにしました。歯周病を要因、心疾患を疾患として、被験者に現在歯周病と心疾患がそれぞれあるかどうかを調べ、各グループの人数を調べることで関係が有るのか考察します。時間軸を横断しているのでこれを横断研究と呼びます 。

 

 これもお金や時間はかかりませんよね。患者に「歯周病か心疾患を罹患してます?」って聞けばいいだけです。

 

 一方でこのデザインでは時間軸に沿わず、瞬間のデータしか参考にしていません。ということはもし歯周病と心疾患に関係がありそうでも、歯周病によって心疾患が引き起こされるのか、心疾患によって歯周病が引き起こされるのか、はたまた双方的なのかという因果関係が分かりません。その点を留意する必要があります。